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お久方ぶりですが、固いテーマでちょっと長くなります!

先週、WSETの学校で「ワインの欠陥」というテーマのセミナーがあった。

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世界中でワイン醸造の経験があり、微生物学研究の大家でもあるアントニオ・トマス・
パラシオス氏が説明してくれて、本当に面白かった!

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ワインを造る基本的な条件としてヴィティス・ヴィニフェラ、土壌、気候、人の手がフォー
カスされがちだけど、その他に酵母という菌が糖と共にアルコール、二酸化炭素に変わる
という「微生物変化」、いわゆる微生物の存在も必要不可欠なのだということ。
技術がこれだけ発達した現代でもこの微生物に取って替わるものは存在しない、という。
なるほど、ほんとにその通り。パンやチーズ、日本酒、しょうゆ、味噌など発酵食品はみんな
そうだけど、私たちの目には見えないけど、小さな小さな生き物が働いてくれてるんだなぁ。

そして菌というものは、私たちの環境にはどこにでもいるもので、ワイナリーも研究所や病院の
無菌室のような環境でワインを造っているわけではないため、酵母以外の菌もたくさんいるし、
ワインに悪い影響を与える菌もいる。こうした「微生物による汚染」というのは世界中のワイ
ナリーでつきものの問題なのだ。

ワインに繁殖する菌、例えば。

Brettanomyces (ブレタノマイセス) - 代表的な悪影響を及ぼす菌
Lactobacillus (ラクトバチルス) – 乳酸菌
Pediococcus (ペディオコッカス) - 乳酸菌の一種
Acetobacter (アセトバクター) – 酢酸菌
Saccharomyces (サッカロミセス) – これはブドウがワインに変わるための大事な良い酵母(菌)

興味深いデータを見せてくれた。
世界的に有名なワインコンクール 「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」。
ここには9000アイテムのサンプルが集まるという。そこで試飲され、欠陥のあるワインとして
評価されたワインは、全体の7.2%だったそうだ。他の業界からしたら、すごい不良率だ。。

欠陥の内容として
49.3% 栓の欠陥 (コルク臭(ブショネ)、不適切な栓による酸化、硫黄、メルカプタン)
33.9% 化学的な欠陥(還元硫黄、酸化、SO2過量添加、褐色化)
16.8% 微生物による汚染(ブレタノマイセス、腐敗、その他)

その中で、重要な問題として3つ、まとめてみる。

【コルク臭・味(ブショネ)】

原因はコルクのオーク材、ブドウ、その他、植物に広く存在するフェノール類とカビと
塩素類(コルクを洗浄するために使う)が反応して生成されるトリクロロアニソール(TCA)
が出す異臭。
ただ大事なのは、これはコルク自体のせいではないのに「コルク臭」と呼ばれてしまう
ことも多いこと。コルクの側面部の滑走を良くするために塗るパラフィン、シリコンの
品質によっても、微生物によって汚染されてしまう場合も。また、ワインの樽の中や
パッケージのダンボール、瓶詰め前の空のワインボトルの中、ワイナリーの建築材などに
TCAを生成するカビが存在する管理の悪いワイナリーで起こる。コルク自体は全くもって
健全でも、TCAが生成される要素が醸造所内にあれば、TCA汚染されることも十分にある。
TCAを生成するカビはワインの樽の中やパッケージのダンボール、瓶詰め前のからのワイン
ボトルの中、ワイナリーの建築材にも存在し、管理の悪いワイナリーではTCAがワインに
混入する率はきわめて高い。

パラシオス氏がアラゴン州で実験的に栽培するピノ・グリジオ100%のロゼワインで
比較試飲(臭)。樽熟なしの若飲みワイン。

① 見本ワイン
     淡い色調。熟れていないバナナ、ペッパーなどの華やかな香り。
     スパイシーさも。甘み。グリセリン。

② +3 nanog/ℓ TCA(トリクロロアニソール)
     香りでは感じない。でも、華やかな果実の香り、スパイシーさ、など際立たず、
     平坦な感じになっている。バナナなど感じない。味もすぼんでる。アルコールを
     ①より感じる。
     ブショネ、とはわからなくてもこの状態は、もうブショネなんだなぁ~。。

③ +6 nanog/ℓ TCA(トリクロロアニソール)
     淀んだ水。湿っぽさ、カビっぽい臭い、がする。

④ +9 nanog/ℓ TCA(トリクロロアニソール)
果実、甘み、爽やかさなど全くない。

⑤ +15mg/ℓ グアヤコール
     バンドエイド、黒くなったバナナ ②~④の臭いとは全く違う。

コルクをスクリューキャップや合成樹脂のキャップに替えれば済む問題ではなく、スク
リューキャップでもベジタル、ゴムのような不快臭のするケースも多くあることから、
原因が実際にどこにあるのか、しっかりと見極める必要があるのだな。
コルクの不良によって発生する「コルク臭」と、栽培時や醸造時にカビが混ざって起きる
「カビ臭」がいっしょくたにされている。

【ブレタノマイセス】

セミナーの日、会場のあるビルに入った瞬間、館内中に異臭が立ち込めていた。
なんというか、足の裏の臭い。それが「ブレタノマイセス」。
授業用に使う「ブレタノマイセス」のボトルが割れてしまったのだそうだ、笑。

ブレタノマイセスとは、酵母の種類の一つで、ワインの香りに悪い影響を与えるとされる
代表的な菌で、ワインメーカーのほとんどが問題視している微生物。ワインに土っぽい、
動物っぽい臭いを与えてしまう。酸化しても飛ばないため、デキャンタージュは無意味。
よく言われていたのは、古樽の中にこの微生物が住み着いていて、古樽で熟成した
ワインにこういう臭いがするということだったけど、実際はブドウの実自体やいたる
ところにいるのだそうだ。

ブレタノマイセスが生成する物質は以下の3種類でそれらが臭いを出している。

4-エチルフェノール(4EP)馬小屋、納屋、革、動物、汗でぬれた鞍などと表現される香り。
3-メチル酪酸(IVA)馬の香り。
4-エチルグアヤコール(4EG)逆にスパイシーと評されたり、薫香と評されたり肯定的な
              香りとして受け止められている。

試飲(臭)ワイン

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名称 : Tres Picos 2008
品種 : Garnacha 100%
産地 : DO Campo de Borja
生産者 : Bodegas Borsao

① 見本ワイン  カンポ・デ・ボルハの「トレス・ピコス」
      熟した果実、フランボワーズ、カシス、アーモンド、トースト。

② +450microg/ℓ Vynil-fenol (ビニルフェノール=ブレタノマイセスの前駆物質)
      ゴム、トーストの臭い。悪くない香り。

③ +45microg/ℓ Vynil-guaiacol (ビニルグアヤコール=ブレタノマイセスの前駆物質)
      薬、クラーブ、灰っぽい香り、色んなワインで嗅いだことのある臭い。
      樽熟の良い香りと思いがちな香り。

④ +1mg/ℓ エチルフェノール+エチルグアヤコール
      タイヤ、革、馬

⑤ +?? THP(テトラ ヒドロ パパベロリン)(マウスとヒトの体内で生成されることが
                     知られている脳内化学物質)
   いわゆる「ネズミ臭・味」と言われる。苔が生えた切り株、動物の死骸のような(?)
      臭い。タンニンは破壊され、何も他に臭わない。100年以上の古い樽を使った
      ワインにこういう臭いする。

4EGの臭いは肯定的に受け止められている、と、ブレタノマイセスの中にも悪い影響を与えない
物質の種類もあり、実際、ワインメーカーによってはブレタノマイセスを活用して、ワインの
特徴として認めようとする動きもあるそうだ。複雑な問題なのだ。

【揮発酸による不快臭(酸化臭)】

発酵によって生成される菌、酢酸や酢酸エチルの過多、また、発酵の最後の段階でアルコー
ルが酸化することで生じる成分アセトアルデヒド(これが更に酸化されると酢酸に変わる)に
よる不快臭。

酢酸は酢の香り
酢酸エチルは除光液、ネイルリムーバーの香り
アセトアルデヒドは生臭い香り

試飲(臭)ワイン

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アントニオ氏がアラゴン州で実験的に栽培するマルベック100%で造る赤2010ビンテージ。
樽熟なし若飲みワイン。            

① 見本ワイン 
    紫がかった、中程度の色調。果実味はそこまでなく、スパイシーさ、ピーマン、    
    コショウ、ヨーグルトなどの香り。タンニン少なめ、樽熟してないけどトースト香を
    少し感じる、典型的なマルベックの特徴。

② +35mg/ℓ アセトアルデヒド
    熟した果実の感じは全くない。ベジタル、未熟のりんご、酒精強化っぽい感じも。
    未熟のブドウで造られたワインでは、と思ってしまいがち。確かにそうだ。。

③ +0.8g/ℓ酢酸
    酢の臭い。触感的にも破壊されてしまっている。香りだけだとそこまで強くないけど、
    飲むと更によくわかる。舌の両側がぴりっとする。
    ①で感じる果実、スパイシーさなど全くない。

④ +100mg/ℓ 酢酸エチル
    ネイルリムーバーの臭い。大工のにかわ、エナメル(laca)

⑤ +酢酸+酢酸エチル
    接着剤、酢の強烈な臭い。

こうした酸化作用は一概にワインに悪影響を及ぼすとは言えず、不快と感じる量が入っている
場合に悪影響を及ぼす。そのレベルに達しない量の場合は、ワインの香りを豊かにすると
見なされている。その好みの量は人によって違うし、国ごとにワインに許容される揮発酸の
量は異なるという事実からも、自分の合うレベルってのを知ることが一番重要な臭いなのだ。

アセトアルデヒドは、SO2を入れないとワインにアセトアルデヒドが発生しやすくなるそうだ。
また、悪酔い、二日酔いになる原因もこのアセトアルデヒド。SO2はそのアセトアルデヒドを
抑制するため、亜硫酸無添加ワインが一概に良いものなのか、ということにもなる。

その他、ブドウ品種、例えば、シラー、テンプラニーリョ、ガルナッチャ、マカベオなどが
還元しやすいのは、システインというアミノ酸が多く含まれるから、ソーヴィニョン・ブラン
にはメチオニンというアミノ酸が豊富で、ワインにとってはプラスに働く酸で、グレープ
フルーツなどの果実の香りのもとである、など、非常に興味深いセミナーだった。

人間の感覚器の中で最も発達している嗅覚。
その嗅覚を慣らせばワインはもっと深くなる。ワインに悪影響を与える要素を知ることで、
よりワインを楽しむことができる。

もっとワインのことわかるようになりたいものだっ。

【追記】

後日、ツイッターを通じてご質問をいただきました。

本文の「例えば、シラー、テンプラニーリョ、ガルナッチャ、マカベオなどが還元しやすいのは、
システインというアミノ酸が多く含まれるから」について。

「最後の方に「還元しやすい品種」が示されていましたが、自然界で還元って起こるので
しょうか?微生物による影響なら理解できますが、品種による違いは何に依存するか解説は
ありましたか?アミノ酸が還元されやすいということなんでしょうか?それは自然に?」

私も化学的なことはちゃんとわかっておらず、再度アントニオ先生に伺ってみたところ、
以下の回答をいただきました。訳をつけてみましたが、ちゃんと理解できる文になって
いるといいのですが。。。

「La cisteina es un aminoacido que tiene azufre en su constitución.
Al ser descompuesto por la levadura fermentativa, esta lo expulsa al vino
como sulhidrico (SH2). Desde ese momento el vino camina hacia la reducción.
Primero como mercaptanos y después como sulfuros. Se podría decir entonces
que si se trata de un proceso natural. Ocurre en uvas y variedades pobres
en nitrógeno asimilable, como las que mencionas. Al quedarse sin nitrógeno,
la levadura no tiene mas remedio que metabolizar la cisterna, que es el
ultimo recurso.

システインは硫黄を多く含有する含硫アミノ酸です。発酵を促す酵母によりこのシステインが
分解されると、硫化水素(SH2)が生成されます。その時点からワインの中で還元が始まります。
はじめはメルカプタンとして、その後硫化物として。よって、還元は自然に起こると言えます。
窒素同化が乏しい品種に起こりやすいです。そうした品種では窒素がなくなると酵母はシス
テインを多く生成せざるをえなくなり、それが還元の原因となるのです。」

Winolemondeさん、ありがとうございました!


FC2 Management
まだ一度も足を踏み入れたことのない九州。
大学時代の仲間に九州出身は結構いて、彼らの陽気な人柄、方言、お酒の強さ(あ、
これは人によりますが、笑)で、性格的にもよく合って九州に対する好奇心はすごく
あったんだけど、結局行けず仕舞でスペインへ来てしまった。

その九州でワインに従事される方々とこちらでご一緒させていただく機会に恵まれた。

カーヴィスト九州

九州各県を代表する酒販店の方々で構成され、九州のワイン文化を盛り上げていく
活動をされているグループなのだそうで、アサヒビールがサポートをしている。
定期的に実施されている欧州視察でワイナリーへの訪問にお供させていただいた。

パリでお待ち合わせ。空港だけなのに、パリってだけでなんだかワクワク♪

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空港内の喫茶店でマリアージュを出してくれちゃうあたり、ふ、フランスって感じっ!

皆様と合流し、
私にとっては人生初めてのシャンパーニュへ!

【ランソン】

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1760年創業の最も古いシャンパンハウスの一つ。
100年以上前のヴィクトリア女王時代に、英国王室御用達となり、1904年にはノンヴィン
テージが主流の時代にファーストヴィンテージをリリース、また1946年シャンパンで初めて
ロゼをリリーするなど、シャンパンの歴史と共に歩むシャンパンハウス。
ほとんどのメゾンがマロラクティック発酵をする現在、ランソンはマロラクティック発酵を
しない伝統的な造り方を守っているそうだ。それだから熟成には時間がかかるけど、ブドウ
本来のアロマや果実味が凝縮し、長熟に耐えうるポテンシャルを有するシャンパンになる。
ノンヴィンテージの規定熟成期間は15か月だけど、ランソンは最低3年の熟成を経た後に
出荷するというこだわりも。

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緩やかな丘の斜面に醸造所、熟成セラーがあり、その一番上にClos Lansonという畑があった。
標高321m。1haの畑で、この畑で採れるシャルドネ100%でClos Lansonというスペシャル
キュヴェを新たに造っているのだそうだ。ランス市内にこうした畑があること自体ほとんどなく、
何度もフランスにいらしているベテランの方も初めて見たとおっしゃっていた。

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2006年に初めて造り始め、熟成セラーで眠っていた。

フラッグシップ「ブラック・ラベル」、そのスタイルのロゼ、グラン・クリュのブドウのみで
造る「ノーブル・ブラン・ド・ブラン」など様々なシャンパンを試飲させてくださった。

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名称 : Gold Label 1985
品種 : Chardonnay 50%, Pinot Noir 50%
産地 : AOC Champagne
生産者 : Lanson

良いビンテージのみしかリリースされないゴールド・ラベル。
その1985を特別に出してくださって。。
ナッツ、アンズ系、ゆるゆると色んなアロマが香って。。
とってもキレイに古酒化していて、優雅。。

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名称 : Extra Age Brut
品種 : Pinot Noir 60%, Chardonnay 40%
産地 : AOC Champagne
生産者 : Lanson

ランソン創業250周年を記念したスペシャルキュヴェ。
ノンヴィンテージで1999年、2002年、2003年の3つのビンテージからシュイイ、アヴィズ、
オジェ、ヴェルズネ、ブジのグランクリュとプルミエクリュのみをセレクトしてブレンド
したものだそうだ。熟成5年以上。
ふくよかで、コクがあって、10年経っているとは思えないイキイキさもあり、素晴らしかった。。

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1日リスボンでも過ごし、

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相変わらずお酒は欠かさず(笑)

そして、スペインへ。

【カヴァ・ラヴェルノヤ】

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バルセロナに到着すると日本人の方がアテンドくださり、カバ生産者カヴァス・ラヴェ
ルノヤへ。「ラクリマ・バッカス」というブランドで有名な造り手で、1890年に創業と
いう古い歴史を持つ。

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まだ「チャンパン(スペイン語でシャンパン)」と呼んで良かった当時のポスター。
歴史を感じる。

オーナーであり、醸造家であるシャビさんは、カバに使う白ブドウ3品種パレリャーダ、
マカベオ、チャレロのうち、マカベオにポテンシャルを見出して、独自のスタイルのカバ
を造っている。ストラクチャー不足、華やかなアロマを表現するパレリャーダ、ストラク
チャー、酸度の高さ、コクを出すチャレロ、その間にいる存在がマカベオで、カバに良い
バランスを与えてくれるそうだ。フォーカスが面白い。
ベースワインを購入してカバを造る生産者がほとんどの中で、全生産量の60%を自社畑の
ブドウで賄う。年間生産量は約60万本とカバ生産者にしては小規模。非常に高いレベルで
の厳しい検品を100%実施、品質保証を徹底しているのは素晴らしい。

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名称 : Lacrima Bacchus Reserva Brut 2008
品種 : Macabeo 45%, Xarel.lo 30%, Parellada 25%
産地 : DO Cava
生産者 : Cavas Lavernoya

ブリュットでも補糖は最低限の8g。スッキリと爽やかなスタイル。

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名称 : Summum Gran Reserva Brut Nature
2007

品種 : Macabeo 35%, Xarel.lo 30%, Parellada 15%, Chardonnay 20%
産地 : DO Cava
生産者 : Cavas Lavernoya

シャルドネも少しブレンドしてあって、ふくよかさもあって、深い。

【エル・コト】

さて、翌日は一路リオハ、エル・コトへ。
1970年創業、すぐ国際的に認められ、今ではエル・コト・クリアンサは、リオハの全ての
クリアンサ赤で国内外共に最も販売量の多いワインだそう。全生産量は1800万本!
でも大量生産ではなく、若飲みワインはほとんど造っていず、品質にこだわったワイン造りを
心がける。自社畑は1000 ha。生産量の20%を賄い、残りは契約農家からブドウを購入。
樽熟セラーは3棟あって、全部で70000 樽。。。ひぇ~。。。

とてつもなく大きな敷地で案内いただいてとにかく歩いた歩いた!

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赤い屋根はみんなエル・コト!屋根が黒っぽくなっているのは、樽熟セラーで、赤ワインが
熟成し少しずつ蒸発していく蒸気で屋根に色がつくのだそうだ。お、面白い!

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南にデマンダ山脈と北にカンタブリア山脈がそびえ、谷間になっている。そこをエブロ河が
通る。ミクロクリマを形成し、恵まれた環境。それがリオハ。

正直、今回の訪問でエル・コトのイメージが変わった。いわゆるモダンスタイルというリオハの
新しいスタイルを造り始めた先駆的な造り手で、スペインどこに行ってもスーパーで目にする
ブランドで、悪くはないけど大量生産で敢えて手にしたいと思うワインではなかった。
でも、案内してくださったアレックスさん、営業部長のビクトルさんのお話から、ワイナリーの
品質に対するこだわり、企業力、従業員を大事にする組織、そして何よりじっくり試飲して、
良いワインだなって思えたこと、コスパの高さを感じたこと、イメージが変わった。

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名称 : El Coto de Imaz Reserva 2004
品種 : Tempranillo 100%
産地 : DOC Rioja
生産者 : Bodegas El Coto

どのレンジも果実、酸、アルコール度、熟成、とてもバランスが良い造りで、
深さと飲みやすさの共存も素晴らしい。

行ったことのなかった産地、ワイナリーを訪れ、ワイン大先輩の方々に色んなことを
お教えいただき、本当に貴重な経験をさせていただいた。
皆様、本当に温かいお人柄で楽しい方々で、本当に楽しませていただいた。
九州人同士、九州弁で話して、日本語の理解が難しいかと思っていたけど、県が違えば
方便も変わってくるのは当たり前で、私にもわかる程度の(笑)優しい九州の言葉たちが
飛び交うほっかりな雰囲気だった。
この場を借りてお礼を言いたい。

この6月、「第一回国際グルナッシュ・シンポジウム」が南フランスのヴァントゥー山を望む
ラ・ヴェリエールのシャトーを会場に開催された。

ガルナッチャ、グルナッシュ

地中海沿岸を中心に栽培されるこの品種は、長い間シラーの陰に隠れ、補助品種に使われたり、
粗野なワインになると低い評価がされてきた。
実際、南仏、スペインの造り手たちもこの品種を重視せず、良いワインができていなかった。
でもここ10年でそれは変わった。それを証明するかのようにこの国際グルナッシュ・シンポ
ジウムが開催されたのだ。

シンポジウムについては、ワインと食の専門誌「ヴィノテーク」9月号(No.370)に素晴らしい
ワインジャーナリスト蛯沢登茂子女史が詳しく記されているが、世界中の素晴らしいグルナッ
シュ・ガルナッチャでワインを造る代表的な造り手が参加し、様々な議論が交わされたそうだ。

その中で80くらい集まった世界中のグルナッシュ・ガルナッチャのワインの中で、ワイン評論家
スティーブン・スパリエ氏も加わってベスト14が選ばれたのだそうだが、その中に今日紹介したい
テロワール・アル・リミットも入っていたのだ。

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時・場所は変わって、プリオラート。10月の素晴らしい秋晴れ!
今年で3回目になるというトロジャ村での収穫祭にお邪魔した。

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プリオラートの第二次改革とも言える新たなスタイルのワインを目指す若い醸造家たちから
成るこの村に在するテロワール・アル・リミットとトリオ・インフェルナルが主催し、南仏ビオの
マタッサ、ファルツのDr.ビュルクリン・ヴォルフなど招待ワイナリーも含めて5ワイナリーの
ワインを楽しみながら、バーベキューを楽しむというイベントだ。
素晴らしいワイナリーばかりで、多くの造り手、ソムリエ、ワインのプロが集まって楽しい
ひと時を過ごさせてもらった。

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テロワール・アル・リミット

このワイナリーには思い入れがある。
人生初めてあまりの美味しさに感動して涙が出たワインを造るから。

世界中のワインまだまだ飲み慣れていないし、素晴らしいワインはたくさんあるはずで、
これからもそういうワインにどんどん出会いたいのだけど、とにかく今までで一番感動した
のがこの造り手のワインのトップキュヴェ「ラス・マニャス」だった。

日本では全く知られていない造り手だから、きちんと紹介したい。
でも、ワイン通ならイーベン・セイディの名前は聞いたことがあるかもしれない。
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南アフリカのケープタウン周辺の産地でセキーロやコルメーラなど最良の赤・白ワインを造ることで
有名な造り手(セイディ・ファミリー)であり、また、フライングワインメーカーとして世界中で素晴らしい
ワインを造る天才醸造家。そのイーベンがプリオラートをワイン造りの理想の土地と評し、ドイツ人の
醸造家ドミニク・フーバーの二人でワイン造りを始めたのがテロワール・アル・リミットなのだ。

2001年が初ビンテージ。
1980年末に既にアルバロ・パラシオス、ルネ・バルビエなどの「4人組」が改革を行い、
アルコール度の高い黒々としたワインから、洗練された果実、凝縮度の高いワインが造られ
始めていた。イーベンとドミニクも同じようなスタイルでワインを造っていたという。
でも、20年、30年、それ以上の熟成に耐えて素晴らしく変化していくワインを造りたい一心で
試行錯誤を重ねた末に出会ったのがEscala Dei と Masia Barrel (現 Mas d’en Gil)だった
そうだ。4人組の改革のずっと前から存在していたこれらのワイナリーの70年代のビンテージを
口にした時にその素晴らしい状態に驚き、二人は開眼したのだそうだ。

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彼らが重視することはとにかく畑を見るとわかる。
土着品種(ガルナッチャ、カリニェナ)のみを大事にすること。
畑は段々畑ではなく、自然の状態の斜面の畑。4年前からビオディナミを実施。
トロジャはプリオラートの中でも北部で冷涼。例えば南部のグラタジョプス村と直線距離に
すると4~5kmしか離れていないのに、収穫時期はトロジャのほうが4週間も遅くなったりする
のだそうだ。小さな産地であるプリオラートだけど、それだけテロワールの違いがある。
標高700m~800mの様々な土壌の畑で12区画、計12ha。
全て古い樹齢(60~70年、中には100年以上)のブドウ樹。収量も大変少ない。

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醸造においても、とにかく伝統的な造り方。1000ℓのプラスチック槽で発酵し、1800ℓの
大きな古いバットで熟成、除梗せずに果梗と共に醸造すること。
醸造所もどこかのガレージを改造しただけのような最低限のものしかない所。
こんな場所から素晴らしいワインができてしまう、彼らの夢が詰まった誰をも招き入れる
楽しい雰囲気の空間。

ラインナップは5つの赤、1つの白。
プリオラートという土地で世界で最良のワインができる品種はカリニェナだと信じる二人、
5つの赤のうち3つはカリニェナ100%。

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名称 : Torroja Vi de Vila 2007
品種 : Garnacha 50%, Cariñena 50%
産地 : DOC Priorat
生産者 : Terroir al Limit
スタンダードの赤。これでもテロワール・アル・リミットの実力を存分に楽しめる。

名称 : Dits del Terra 2007
品種 : Cariñena 100%
産地 : DOC Priorat
生産者 : Terroir al Limit
南向きの畑のブドウ。男性的、でもエレガンス、複雑さがあって、素晴らしい酸。
それでも北向きの畑のような冷たさがある。暖かい畑からでも造り手の工夫によってエレガントな
ワインができるって教えてくれる。

名称 : Arbossar 2007
品種 : Cariñena 100%
産地 : DOC Priorat
生産者 : Terroir al Limit
北向きの畑のブドウ。女性的。軽やかで緻密。

名称 : Les Manyes 2007
品種 : Garnacha 100%
産地 : DOC Priorat
生産者 : Terroir al Limit
唯一のガルナッチャ100%。
感動で涙が出た赤。軽やかさ、冷たさ、緻密さ、複雑さ、素晴らしいバランスで。
イーベンとドミニクにとっても人生を変えてくれたワインなのだそうだ。。

名称 : Les Tosses 2007
品種 : Cariñena 100%
産地 : DOC Priorat
生産者 : Terroir al Limit
カリニェナ100%のトップキュヴェ。カリニェナのプリオラートでのポテンシャルを余すところ
なく感じさせてくれる。

そして白。

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名称 : Pedra de Guix 2009
品種 : Garnacha Blanc, Pedro Ximenez
産地 : DOC Priorat
生産者 : Terroir al Limit

2009が初ビンテージの白。
トロジャ収穫祭でリリースしていた。瓶詰め直後だから樽のパワーと重みが感じられるけど、
2年くらい経ったら素晴らしい白になるのでは、と感じさせるワイン。

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ガラスの結晶のような「pedra de guix」という花崗岩質土壌だそうだ。ミネラル。
冷たさを与えてくれる。す、すごい。。。

テロワール・アル・リミットのワインは、今までのプリオラートスタイル、プリオラートの
常識を壊すワインたち。それでも「プリオラートらしくないワイン」と定義するのは違う気がする、
「これもプリオラートのワイン」だと開眼させてくれた。

また、今年の3月にスペインの全国紙 "El Mundo誌" でのワインセクションで
試飲された22種類の錚々たる顔ぶれのプリオラートワインのうちトップ5にテロワール・
アル・リミットのワインが3つ入ったそうで、一気に注目された。

第1位 ラス・トッサス 2007 (生産本数 1,388本)
第2位 ラス・マニャス 2007 (1,388本)
第3位 ディッツ・デル・テラ 2007 (2,135本)
第6位 アルボサル 2007 (2,386本)
第7位 トロッジャ - ビ・デ・ビラ 2007 (4,668本)

他にはフィンカ・ドフィ、クロス・エラスムス、マス・ドイシュ、クロス・モガドール
などの蒼々たる顔ぶれ。

印象に残ったイーベンの言葉
「プリオラートのテロワールの美しさをまだまだワインの中で表現し切れていない、
納得できていない。世界中で様々なテロワールを見てきたけど、理想郷であるこの土地と
これからも真摯に向き合って行きたい。」

冒頭に書いたシンポジウムでは、スペインの造り手も多く高く評価されていて、代表的なものと
してはテロワール・アル・リミットの他にモンサンでルネ・バルビエ氏が造る「エスペクタクル」、
ポルタル・デル・モンサンの「トロッソス」、ナバラのドメーヌ・ルピエールが造る「エル・テロワール」、
マドリッドでラウル・ぺレスとマルク・イサルがつくる「ベルナベレバ」、メントリダでヒメネス・ランディの
フィン・デル・ムンド 」などがある。

プリオラートは確実に変化している。他の産地もそうだ。だからスペインが面白い。
10年前と同じイメージでは出会えない驚くべきワインがたくさんある。
ワイン伝統国にしてニューワールド的な進化をしているスペイン。
これからも驚くべきワインと出会っていきたい。

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